投手編 : 肘の故障の原因について

 弊社の少年野球指導の中でも最も重要なことは怪我をしない正しい投げ方を教えることだと考えております。しかし、現在の少年野球の現状は見ていると小学生時に肘を故障して中学生で手術を受けている選手が多く見受けられます。原因は投げ過ぎや、正しい投げ方をしていないために肘を故障している傾向が多く見受けられます。
 それでは下記の映像を見て頂きたいと思います。プライアー投手とリンスカム投手の腕の振りを線で追った比較映像です。

左側映像のプライアー投手がメジャー昇格後一年目に18勝6敗でサイ・ヤング賞の3位候補となりました。しかし当時この時期の映像をスミスが見て「2,3年で肘を壊して、長くは投げられない」と話していたことを鮮明に覚えています。その時は私もスミスのアシスタントを始めたばかりでしたので「まさか?」と思いました。その3年後にスミスの予想通りの結果となり、メジャーリーグの舞台から姿を消しました。スミス曰く、「大学時代は試合数が少ないからこの投げ方でシーズンを終えることができる。しかしメジャーリーグの164試合にポストシーズンに出場したら、あの投げ方では壊してしまう。」
 それに対して右側映像のリンスカム投手は投げ方がユニーク過ぎて肩を壊すリスクがあるとシアトル・マリナーズのGMがドラフトで指名せずにサンフランシスコ・ジャイアンツがドラフトで指名しました。その後、メジャーリーグ屈指の投手へと成長し2年連続でサイ・ヤング賞を獲得しました。
 皆さんにこの映像でお伝えしたいことは、左のプライアー投手は耳の近くにボールを近づけて肘から前にボールを押し出していることが分かります。それに対しリンスカム投手は腕を大きく振り胸→肩→肘→手首と順番にリンクさせて各関節や靭帯に掛かる圧力を逃がし、全身でテコの力を使いながら投げていることが分かります。肘を深く曲げ、肘で押し出すように投げることで肘の内側にある内側側副靱帯<参照①>が引っ張られてしまい、さらに過度の圧力が掛かるために故障の原因につながります。皆さんへのアドバイスとしては各自の持つ肘の自然な角度<キャリーアングル>を維持しながら大きく投げることでこれらの故障は防げると確信しております。どうか正しい指導方法がたくさんの子供達に伝わることを心から祈っております。
参照① 内側側副靱帯とは?